そろばんは集中力や記憶力だけでなく、情報処理能力や観察力も鍛えることができる習い事として、多くの子どもが通っています。
足し算や引き算は小学校低学年の子どもでも比較的簡単にできますが、掛け算となると少々難易度が上がってきます。
今回はそろばんの掛け算における3つの基本や計算方法について、わかりやすく解説していきます。
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そろばんの掛け算は「両置き」「片落とし」「両落とし」の3種類
そろばんの掛け算の方法は、掛けられる数(実(じつ))と、掛ける数(法(ほう))をそろばんに置くか置かないかです。
それによって、「両置き」「片落とし」「両落とし」と大きく3つに分けることができます。
なお、本来「両置き」という言葉はないのですが、ここでは便宜上このように呼びます。
それではさっそく「両置き」から見ていきましょう。
そろばんの掛け算「両置き」のやり方と2つの特徴
両置きは、実と法を最初からそろばん上に置いてから計算を行うやり方です。
具体的には実をそろばんの中央に置き、法を左側に置きます。
両置き①11×6のやり方
初めに、「11×6」の計算方法を説明します。
まず実(11)を中央に、法(6)を左側に置きます。
最初は十の位の計算です。
1×6=6の6を右側の定位点(4つおきに点がある列)の一つ左側に置きます。
定位点が一の位なので、一つ左は十の位です。
次に、一の位の計算です。
1×6=6で、6を先ほど置いた6の右隣(定位点)に置きます。
よって、答えは「66」となります。
両置き➁8×25のやり方
次に「8×25」の計算方法です。
上と同じように、実(8)を中央に、法(25)を左側に置きます。
8と十の位の2の計算8×2=16で、右側の定位点の一つ左と2つ左に16を置きます。
次に8と一の位の5の計算で、8×5=40です。
十の位に4を置くのですが、今十の位は6が置いてあるので、4を足すと10となり繰り上がります。
なので、十の位は0、さらに百の位には1が置いてありますが、先ほど繰り上がった1を足して2を置きます。
一の位は0のままです。
よって答えは「200」となります。
特徴①問題用紙を見ずに計算できる
両置きは、最初から両方の数を置いていることで、その後は問題用紙を見ることがなくなります。
これにより、視線を紙とそろばんの間で移動させることなく、そろばんのみに集中して計算することができます。
特徴②ゆっくり覚える幼児~低学年向き
また、初めから両方の数を置いているので、一つひとつ確認しながら計算を行うことができます。
ゆえに、そろばんを習い始めた幼児~小学校低学年に向いているといえます。
ただし、両方置く作業があるので、スピードに関しては以下の二つに比べると遅くなります。
そろばんの掛け算「片落とし」のやり方と2つの特徴
「片落とし」は、実だけをそろばん上に置いてから計算を行うやり方です。
具体的には、実をそろばんの中央に置くだけです。
片落とし①31×5のやり方
ここでは、「31×5」を計算します。
まず、実(31)を中央に置きます。
一の位の1と5の計算1×5=5で、2つ隣に5を置きます。
次に十の位の3と5の計算は、3×5=15。
なので同じく2つ隣(先ほど置いた5の一つ左)に十の位の5、さらに一つ左(さっき1が置いてあったところ)に百の位の1を置きます。
よって、答えは「155」となります。
片落とし➁7×56のやり方
次は「7×56」です。
実(7)を中央に置き、7と十の位の5の計算7×5=35で二つ隣の十の位に5、その一つ左に百の位に3を置きます。
次に、7と一の位の6の計算、7×6=42です。
一の位は2で、十の位の右隣に2を置きます。
十の位は今5が置いてあり、そこに4を足すので9となります。
よって、答えは「392」となります。
特徴①両置きより早く計算できる
上記からわかる通り、「片落とし」は初めに法を置かないだけで、計算方法は「両置き」と全く一緒です。
法を置かないので法を覚えるか問題用紙を見る必要がありますが、作業が減るので「両置き」より早く計算ができます。
特徴②桁の間違いを防ぎやすい
片落としには桁の間違いを防ぐため、位取り(くらいどり)という方法があります。
それは「実の一の位から法の桁数+1だけ、右にずらしたところが答えの一の位」というものです。
上の2つの例でも31×5の場合、もとの1の位(1)からみて、法の桁(1桁)+1。
つまり2つ分右にずらしたところが、答え155の一の位の5があります。
同様に7×56では、もとの1の位(7)からみて、法の桁(2桁)+1、つまり3つ分右にずらしたところが答え392の一の位の2があります。
そろばんの掛け算「両落とし」のやり方と2つの特徴
3つ目に「両落とし」の計算方法をみていきましょう。
両落としは、実も法も置かないやり方です。
両落とし①35×3のやり方
まずは、35×3の計算方法です。
何も置いていないところからスタートします。
このとき、答えの一の位をどこか適当な定位点に設定します。
まず、実の十の位の3と法の3の掛け算です。
3×3=9で十の位(定位点の左隣)に9を置きます。
次に実の一の位の5と法の3の掛け算です。
5×3=15で、一の位に5を置きます。
十の位には9があるので1を足して10となり、十の位は0、百の位に1を置き、答えは「105」となります。
両落とし➁245×12のやり方
次は、245×12の計算方法です。
上と同じように、答えの一の位をどこか適当な定位点に設定します。
またこの場合、実も法も大きい桁から計算していきます。
初めに実の百の位2と法の十の位1から2×1=2となり、千の位に2を置きます。
実の十の位の4、一の位の5も同様に法の1からそれぞれ1×4=4、1×5=5となり、それぞれ百の位、十の位に4、5を置きます。
次に実の百の位2と法の一の位2の計算を行います。
2×2=4で、百の位のおいている4に4を足して、8となります。
実の十の位4と法の一の位2の計算4×2=8なので、十の位に置いてある5に8を足して13。
よって十の位は3となり、百の位が1繰り上がって9となります。
最後に実の一の位5と法の一の位2の計算5×2=10なので、一の位は0、十の位が1繰り上がって4となります。
よって答えは「2940」となります。
特徴①計算時間を大幅に短縮できる
この「両落とし」は実も法も置かずいきなり計算するので、計算時間は「両置き」「片落とし」よりもさらに短縮することができます。
ただし問題を覚えていないと、視線を問題用紙とそろばんを何度も往復することになるので注意が必要です。
特徴②暗算ができるようになる
最初から何も置かずいきなり計算を行うので、頭を計算に集中することにより暗算が得意になります。
掛け算の指導はそろばん教室によってさまざま
掛け算の指導は通うそろばん教室によって異なります。
基礎をじっくり教えている教室もあれば、実践的に教えている教室もあります。
通うことを検討しているのであれば、まずは見学してみるのもいいでしょう。
学び方①級に合わせて段階的にステップアップ
掛け算の方法は様々あることがわかりましたが、どの方法を使ったらいいんだろうと迷う人もいますよね。
「両置き」<「片落とし」<「両落とし」の順に難易度が上がりますが、その分計算スピードは格段に速くなります。
一般的には初心者から5級、もしくは6級までは「両置き」、4~1級は「片落とし」。
それ以降、高い段を目指したりそろばん大会でより上位を目指すということであれば「両落とし」を学んでおくとよいでしょう。
学び方➁最初から「両落とし」を使う
初心者は「両置き」から始める人が多いと思いますが、最初から「両落とし」に慣れるという方法もあります。
上でも述べたように難易度が高いため最初は苦労しますが、別の方法から両置きに変更するよりも早く慣れることができます。
一度慣れてしまえば、時間短縮というメリットを享受することができるでしょう。
そろばんの掛け算は3種類!それぞれの良さを知ってマスターしよう!
上記で解説した通り、そろばんの掛け算には3種類あることがわかりました。
これらの方法は、どれが正しくてどれが間違っている、ということはありません。
それぞれの特徴を理解し、あなたの現在のレベルやそろばんを使いこなす目的に合わせて、臨機応変に使い分けていきましょう!